料理

部族の味

第05号, 2019

部族の味

サンギータ・カンナ |著者

第05号, 2019


インドの部族の伝統的な料理は、栄養価が高くバランスがとれており、また、環境保全に対しても優れています。Sangeeta Khanna(サンギータ・カンナ)は、受け継がれてきた伝統的食事の魅力を更に掘り下げます。

その日のメニューは、ダル、お米、タングリムバイでした。最初の二つはほとんど全てのインドの家庭で見られる定番メニューですが、3つ目は私の好奇心を書きたてました。私はメガラヤ州の、絵のように美しい首都シロンの郊外におり、昼食のために地元の小さな食事処であるコングの店にいました。屋台の女性は、清潔なお皿の上に糯米を山盛りにし、その横にダルを少しと、濃厚なカレーをお玉に二掬い盛ってくれました。「それはタングリムバイです。とても美味しいんですよ。」と、私のガイドの女の子は教えてくれました。タングリムバイは、発酵大豆のペーストを胡麻、豚肉、ツンガップ(魚の干物のチャツネ)と一緒に時間をかけて調理したもので、この州のカシ族の家庭では一般的です。とても強い香りがあり、食事が終わった後もその味が残ります。

チャッティースガル州パンドリパニ村のドゥルワ族の市場で売られている地元産のキノアと黒黍;

インドにはいくつもの部族のコミュニティがあり、それぞれが場所、地形、気候、歴史、宗教、習慣が混ざり合い抽出された、味わい深い食事のレパートリーなどの豊かな文化遺産を誇っています。昔から、これらの部族は、野生の、または栽培した、自然で栄養価の高い森のものを食べてきました。少しのスパイスで味付けしたり、多くの場合は生で、または炙ったり、発酵させたり…このような部族の料理では、食材がもともとの風味を保っています。

例えば、インド北東部では、米が多く栽培されており、主食として食べられていて、蒸したり、シチューのようにしたり、または竹の筒に入れて調理したり(コーラムと呼ばれる調理法です)、様々な方法で調理されています。しかし、一番人気があるのは、何と言っても野生の糯米です。メガラヤ州では人気のある米料理はジャドーです。アッサム州のボド族の家庭では、米粉と鶏肉のシチューであるオンラワンクライが人気があります。アルナーチャル・プラデーシュ州では、蒸し餅(ダンポー)がごく一般的です。

オリッサ州マルカンギリで毎週開かれる市場で買い物をするボンディ(ボンダ)族の女性;チャッティースガル州マルカデダでマフアの花を摘むゴンド族の女性

これらのコミュニティの多くは野生動物が豊富な森の近くに住んで狩猟を行っており、豚肉を中心とした肉が彼らの食事で大きな位置を占めています。北東地域では、野菜も食事の中心であり、主な調理方法は発酵です。ラディッシュを発酵させて作るシンキは、シッキム州で一般的な食べ物です。メガラヤ州のガロ族は野菜を愛しており、彼らの食事にはヤム芋や新鮮な野菜がふんだんに使われています。魚もこの地域ではとても人気があり、いくつかの州では、新鮮な魚をバナナの葉でくるんで焼いたものが食べられています。

インド北部の丘陵地帯では、レンズ豆と小麦が伝統的な地元の料理として一般的です。ジャウンサリ族(ウッタラーカンド州の部族)のコミュニティでは、コプロティ(黍のロティ)を新鮮なダヒとパハディナマック(塩)と一緒に、ガルガルと呼ばれる山に自生するレモンを添えて食べます。木の床に座り、乾燥した葉っぱを木の棒やカンササリー(青銅の棒)で留めた器の上にこれを盛って食べるのが、この食事を楽しむ最適な方法です。ヒマーチャルプラデーシュ州の旅行中に、屋外での食事会を見かけることがあったら、遠慮せずに参加してみましょう。どこの食事会でもメニューは同じはずです。テリヤマア(黒レンズ豆のカレー)、チャネカマドラ(ひよこ豆のカレー)、マーニ(甘酸っぱいウーラット豆のカレー)、そしてミタ(ナッツを添えた甘くしたお米)です。

チャッティースガルのトカパル市場で軽食として売られているチャプラ(赤アリ)

実のところ、インド中の全ての部族は、自分たちの食事が、彼らの生活の全てが育まれた豊かな森林を守ってきた部族の文化が真に反映されたもの、つまり、とても神聖なものであると考えています。

マディヤプラデシュ州やチャッティースガル州などの州でも興味深い部族料理があります。 それらの場所独特のパニヤロティは、コーンミールで作られており、地元のブテアの葉の上に延ばされ、屋外の竃で焼かれ、野鳥のカレーと赤アリのチャツネと一緒に、栄養のある食事になります。もう一つのそのような組み合わせはバフレです。独特な食感を生み出すために、全粒粉の団子を蒸した後に更に焼きます。そして、何種類かのレンズ豆とギーで作ったダルと一緒に食べます。

ナガランド州のジャカマ族の村で、太陽の下で干されている様々な種類の米やその他の穀物

インド中部全体で一番多く産物を提供する森の植物の一つはマフア(インドバターツリー)です。花を発酵させれば、アルコール飲料を作ることができます。レーズンのように天日に干したマフアの花は、甘味料としてキールやメティーロティ―などのデザートや軽食に用いられます。

チャッティースガル州のドゥルワ族の市場で様々な魚の干物を売っている女性

ゴンド(ゴンドワナ族)は、現在インドに残る最大の部族であり、伝統的に森に住み、自然と完全に調和して生活しています。ゴンドの食生活には、アスコドとクトゥキと呼ばれる二種類の黍があります。この、タンパク質豊富な黍は、スープのように調理されるか、また、乾燥シリアルのようにして野菜と一緒に供されます。マハーラーシュトラ州のマディラ族は、蛾の幼虫を探し出し、少しの調味料と一緒に葉っぱに包み蒸し焼きにします。

これらの料理は地元の農産物を使用しているため、農業部門へのプレッシャーを軽減することができます。また、食材の全てを余すことなく使用することに重きを置いているため、食材の無駄も最小限です。なぜ、部族の料理が未だに話題になり、そしてインド中のフードフェスティバルなどで宣伝されているのか。それには理由があります。料理人たちは、これらの部族の料理を保護し、現代風の料理に合わせようとしています。

マディヤプラデーシュ州の部族の村でトウモロコシを乾燥させる農民

部族関係

インド亜大陸には、227の民族グループの元に550以上ものコミュニティがあり、そのコミュニティの中に53億もの部族があります。その53億の部族は、様々な森林植生タイプの約5,000の村に住んでいます。

インドの部族は、薬用、飼料、繊維、燃料、食用、精油、また文化やその他の様々な目的のため、9,500種を超える野生植物を使用します。そのうち、約3,900種の野生植物が食用です。

サンギータ・カンナ

Sangeeta Khannaは植物学の修士号を取得しており、微生物学者としての訓練を受けています。彼女は世界中で栄養学の指導者として働き、人々の食生活を昔ながらの家庭料理にの戻すことで、数多くの人々を生活習慣病から救ってきました。
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