遺産

現代のための伝統

第02号, 2020

現代のための伝統



工芸遺産の復活とは単に古い藝術形式を反復することを意味しているわけではありません。その意味は古い藝術形式を徹底した創造的自由を駆使して現代に繋げて、その努力による工程に持続可能性を与える事なのです。これが数社のブランド保持企業が田園地帯のラジャスタン居住の職人たちに工芸品の製作の持続を持ち掛けている理由なのです。

昨年、サワン カ レハリヤと呼ばれる色彩に富んだラグの職人によるオリジナルデザインの作品に有名な欧州製品デザイン賞の2019年度賞が与えられました。この賞は世界中から応募されたユニークなデザイン作成の試みを問う作品の中から選定して授与するもので、この賞を獲得したのはジャイプール近郊にあるケクリ村に住むパルヴァティとバグチャンドでした。この州の伝統の手織り段通織作業共同体の会員であるこの二人の職人たちはこの光煌めく美しさの手織り段通を彼らの住む砂漠の家を取り囲む大自然に触発されて創造したのです。二人が言うには、この作品はその制作を完全に彼らに任された最初の仕事だったとのことです。そしてその成果としてこのように大きな賞賛が彼らが独自で製作したデザインに与えられる結果を齎したのですから彼らはこの賞賛で大きな勇気を得たのです。

彼らはジャイプール ラグス インディア(JRI)の支援を受けている織物共同体のメンバーで、このJRIは40年の歴史を持つブランドで、古い昔からのインドの織物伝統保全と同調するものです。ラジャスタンの活気に満ちた芸術伝統とその芸術に携わる家族たちを生かし続けるべく働いている今一つのグループにニラ ハウスがあります。“それぞれの伝統工芸共同体が自分たちの生活様式に誇りと信念を持っているので、我々がそれらの芸術価値を何らかの介入方式で使用すれば、彼らはその介入から更に力を借り、受け入れる事になります”とニナハウスで職人開発部の長を務めるジュイ パンデイは言っています。

簡単にすること

こんにちにおいては組織は職人に創造的自由裁断を任せれば、それで職人にユニークな作品を作らせることができることになると理解するにいたっています。たとえば、JRIが考案した玄関の階段立ち上げ企業精神プログラムは只原料を渡すことだけではなく、織り手をつとめる本人の職人のほかにも職人を助けて織る家族のために織機や糸其の他類似の必要とされる道具もその職人一家の家の入口の階段のところまでまとめて運ぶという作業を意味するのです。

ニラハウスは二又のアプローチという手段を取っています。一つ目の働きは直接的にデザイン開発に介入することで二つ目はジャイプールのニラハウスセンターに展示場を設けて職人が彼らの作品を紹介、促進、公表、そして展示する働きです。

ニラ ハウス出品の伝統的染色法を代表する家財道具;ジャイプール市の地勢をヒントにインスピレーションを得て製作されたカーペット。

さらなる段階

“工芸を現代の世で栄えるようにするには従来の工芸に変化を加えることが重要です。伝統工芸の保全と持続保護の鍵となるものは今までの工芸品をこんにちの世に受け入れられる工芸品に移し替えることです。これを実現するにはまず忍耐力、理解力、全力投球、それに伝統工芸形式と同時に現代において我々が達成できるかぎりの最高の工芸品の両方に注ぐ情熱です。”とはニラハウスの長を務めるアヌラダ シングの言葉です。

マッテオ シビックは高名なイタリア人のデザイナーですが、彼はJRIと協力してアバンギャルドデザインの手造りカーペットをヨーロッパのデザインセンスに習っての実験的製作を成し遂げ、ジャイプール ウンデルカメルと名付けました。“この名をつけられたカーペットは全て芸術作品です。私は人々がこれらの敷物を見て、そして実際に使い、これほどまでに豊かな自然をもつこの国インドの高い感受性を理解してくれることを望む者です。更に私はこれらのカーペットの一枚一枚を精魂込めて製作した大変な職人の労力を人々に理解してほしいと望みます。”とシビックは述べています。

ニラとアンナのヴァレンタイン コレクションが陳列されているところ

英国の高級ガーメントのデザイナーであるアンナ ヴァレンタインはラジャスタンで生地職人を使って手広い仕事をしているデザイナーで、彼女もまた持続可能性の必要を断言しています。“私達が私達を取り巻く環境に気を配れば配るほど、その環境は私達に我々が購買するもののみならずそしてそれがどこで作られたものであろうということだけでなく、むしろこの一切れの生地は何時まで使用に耐えるのかということに気付かせてくれるのです。”とヴァレンタインは言っています。彼女は最近ニラハウスとコラボして伝統的な手織り技術と自然素材のインディゴ染料を公開すべくその目的のコレクションを計画しています。

形を創り出すこと

いまでは、ラジャスタンの近郊に残っている昔ながらの田舎の場所で、職人たちが自分たちの子どもに工芸を学ばせています。

職人たちに啓発されて立ち上がった政府の援助を受けての持続的生計と革新的支持システムは工芸分野とそれに携わる人口が繁殖的に増加し、保全されることを確かなものにしています。会社組織の先導を以って社会的により責任を持つ立場に工芸を位置付けるという動きはいまでは多様化されてきて、工芸職人たちは地方に根付いた経済圏を打ち立てることに心を砕いています。地方に存在する共同生活体は地方から外へ踏み出した外部世界を彼らに教えてくれる指導者を必要としています。そしてこんにちの組織(会社組織)は我が国を内部的にも外部的にも一体となるように結びつけるこの過程の促進剤の役割を果たしつつあるのです。

ヴィネヤックスーリヤスワミ

ヴィナヤク・スルヤ・スァミはデリーに拠点を置くジャーナリストです。彼は機械工学の学位を取得し、インド海軍で見習いの造船技師として働いてきました。10代の頃からパートタイムで作家をしていた彼は、執筆と旅行の楽しみを追求するためジャーナリズムの道へ切り替えました。
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