ゴールデン・スクリーンが遺したもの
世界的な古典映画や著名なインド人監督の回顧録から、失われた言語に焦点を当てた地方映画の受賞作まで、第50回インド国際映画祭は、単なる「良い映画」以上のものを提供しました。
50年前に、世界最高峰である映画の何本かをインドで紹介する場として生まれた映画祭は、今日、世界で最も評判の高い映画祭の一つになりました。インド国際映画祭 (IFFI) は、ゴア州のパンジムで11月20日に50年目の幕を開けました。開会式を彩ったのは、インドのエンターテインメント業界に熱い忠誠心を持つ、アミターブ・バッチャンやラジニカーントなどです。情報放送局、インド政府、ゴア州政府が主催するIFFIは、アジアで最も早く始まった映画祭の一つであるだけでなく、最も重要な映画祭の一つであると言えるでしょう。
女性と彼女らの夢
このイベントでは、76か国からの200本を超える映画が上映されました。特筆すべきは、50本もの(世界各国からの!)、非常に多くの映画が女性によって監督された、または女性中心の物語が描かれているということです。これらの映画は、女性と、彼女らの夢の素晴らしい話を描いた映画です。最も注目すべき2本は、日本の映画監督HIKARIによる「37セカンズ」と、イランの映画監督サミラ・マフマルバフによる「午後の五時」でしょう。
この他にも、夢に向かって進んでいく女性を描いた映画がありました。アビシェーク・シャーの「Hellaro」や、サミール・ビッドワンズの「Anandi Gopal」です。マラーティー語映画である「Anandi Gopal」は、19世紀後半にペンシルバニア州の女子医大で学んだインド初の女性医師、アナンディ・ゴパル・ジョッシの人生に基づいた映画です。

“「ここに来られたことを嬉しく思います [IFFI, 2019]。私を招待してくださったインド政府とゴア州政府に感謝いたします。映画は常に社会生活の不可欠な部分でした。世界で何が起こっているのかを知り、また、多くの人々と出会い交流する機会をも与えてくれる、このゴアで行われる偉大な映画祭は、ゴアの人々にも恩恵を与えています。」”
アミターブ・バッチャン
パドマ・ブーシャン勲章受章のインド映画俳優

“「IFFIの目的は、エンターティメントの起源がインドにあり、2,200年以上前に書かれたナーティヤ・シャーストラまで遡ると示すことです。」”
アミット・カレ
インド政府情報放送局大臣
地方への焦点
このフェスティバルは常にインドの地方映画の振興に力を入れており、今年も例外ではありません。フェスティバルのインディアンパノラマ(長編映画)セクションで、5本のマラーティー語の映画が上映され、このフェスティバルで上映された地方映画として最大の数になりました。何本かの地方映画は、インド固有の伝統を守ることに焦点を当てていました。上映されたインド北東部の3本の映画は、失われた言語についてでした。最も話題になったのは、ナショナル賞を受賞した、アッサム州の映画監督マンジュ・ボラの「In The Land of Poison Women」という、消えつつあるパンチェンパ方言についての映画でした。また、独特な詩のようなスタイルで撮影されたアッサム州の映画監督ウトパル・ドゥッタの「Bohubritta」と、ガロ/カシ語で撮られたプラディップ・クルバの「Lewduh」にも注目してください。

“「私の仕事人生では、たくさんの素晴らしい瞬間があり、多くの偉大な人々、偉大な監督と仕事をしました。どれが一番かは選べません。皆さん、映画を観にいってください。それが私からの一番のメッセージです。」”
イザベル・ユペール
フランスの女優

“「私たちは映画の共同制作に慣れており、異なった人々と経験を交換できるのは楽しいことです。私達は遠い場所にいますが、映画を理解しているという意味においては、一つの家族です。」”
ゴラン・パスカリェヴィッチ
「Despite the fog」セルビア人監督
追憶
1950年から1970年代後半にかけて、インド映画界には、物語、俳優、そして予算の面で商業映画とは全く異なる映画を作る、新しい監督たちの一群が現れました。ミリナル・セン、アドゥール・ゴーバーラクシュナン、シャーム・ベネガル、マニ・コウルなどの力強い監督たちがそのメンバーでした。今回の映画祭では、「インド映画のニュー・ウェーブの回顧録」と名付けられた特別なセクションが企画され、これらの既成概念を超えた監督8人の計12作が上映されました。

そして今回の映画祭では、インド初上映90本、世界初上映6本、アジア初上映が11本あり、また、生演奏付きのサイレント映画の上映も3本ありました。それだけではありません。今年は、「ミニムービーマニア・ショートフィルムコンテスト」という映画製作コンテストも初開催されました。映画祭は、映画上映の場所としてだけではなく、議論や創造的意見交換の場所としても常に活用されてきました。国際的な創造活動に携わる同業者達からの力強い意見の後押しを受け、IFFIは映画の最も大切な目的である、社会を映し出すということを実現させ、「映画の原材料は人々の人生そのものです」というサラジット・レイの言葉をここに繰り返したいと思います。
IFFI 2019: The winners


地上のアトラクション
注目
ロシアはIFFI2019の「注目すべき国」であり、ロシア映画界の世界への貢献が現れた、卓越した8本の映画が上映されました。
今年の映画祭で注目された監督は三池崇史でした。日本出身の彼は、世界で最も優れた映画監督の一人だと言われており、彼のレパートリーは、今回の映画祭で上映されたように、ドラマチックな映画から家族向けのものまで多岐にわたっています。
言葉がなくても
今年の映画祭のハイライトである、生演奏付きサイレントフィルムセクションは、かつて人気だった映画鑑賞の形に敬意を表して特別に企画されました。アルフレッド・ヒッチコックの「恐喝」、セルゲイ・エイゼンシュテインの「戦艦ポチョムキン」、そしてG.W.パプストの「パンドラの箱」の3本の古典サイレント作品が上映されました。